二人はパーソナル
平行世界、そんなパラレルワールド。
その世界をとあるエレガの仕業で繋がりがあるようにしてしまった某所。
「エリザベス……あなた何をやっているのです?」
「いいから黙って彼を複数の世界から呼べばいいのですこの長鼻のくせに短小が」
イゴール女子泣き。だけどそれにちょっと悦びを見せつつ、彼は本来であれば無理な事をやってのけた。
【ヤバさ満点】
「お二方こんにちは」
「「エリザベス!?」」
同じ顔、同じ声をした男はベルベットルームで遭遇した。
「「ってかお前も誰だ!?」」
エレベーターの中で声がハモる。この狭い空間で老人と女性と全く同じ奴がいるってのもおかしな話だ。
「「何で俺が二人いるの!?」」
「あなた方は同じであり別人、平行世界の住人です」
「納得」
「いや、分からん」
ここで若干の違いを見せる。納得したのが彼、理解不能だったのが桜。
佐倉 桜
鳴海 優也
共に月光館学園高等部二年F組所属の高校生でありペルソナ使い。
学生寮にいるペルソナ使いの中で唯一特殊なペルソナ使いである事からリーダーと言う立場にある。
「つまりあれか、お前は俺であってお前じゃないのか」
「すまん、もう少し分かりやすく」
彼にとっての自分の世界では立場は全く同じなのだが、名前も違えば細かいところが違う。
極めて近く、限りなく遠い世界の存在。
それが彼らだ。
「何となく把握したが、何だって毎回こんなふざけた真似をするんだエリザベス」
「面白そう、で十分ではないのですか?」
こっちからすれば迷惑だ!!
「いいから私に弄ばれていればいいのですよ片方に至っては私のペット希望ではないのですか?」
桜がグッと黙ると、どうでもいいという顔をしている彼は早く帰りたかった。
「分かったから早く帰せよエレガ。またジャイアントアイギスみたいな件をしようってんじゃないだろうな?」
ジャイアントアイギスって何ーーーーー!?
「分かりました。ただし、この私がただで帰すと思っているほどアマちゃんと?」
「帰りたいから」
「帰せよ」
「フフッ……そうやって自分ではどうしようも出来ないほど途方も無い力に遊ばれているお二方もまた食事し甲斐がありそうですわね」
怖ッ!! それとそういう被害は出来れば別の自分でお願いします。
と、彼等はまだ見ぬ他の自分に全てを擦り付けた。
「仕方ないですわね、分かりました。とにかくあなた方を戻しますからそれで十分ですか?」
「OKエリザベス。何かやらかすなよ?」
「! 面白……分かりました」
今面白そうって言おうとしていたよね? ね? ね?
そんな事がありながら、とにかく彼等は目が覚めた。
とんでもない事態に巻き込まれながら。
――――
彼は自室で目が覚めた。数ある並行世界の中で調教する側に目覚めた人間として。
確か昨日はいつも通り調教の真っ最中でその後そのままダウンだったはずだ。うん、それは間違いない。
だけど何故か自分のPCの前で突っ伏して寝ていた。しかも今部屋には一人しかいない。
どうやらスクリーンセーバーの状態から長かったからか、スタンバイ状態になっているようだこのPCは。
しかし、昨日付けた記憶は無いし相手はどこへ行ったのかと思うし、今朝の六時だよなと訝しむ。
というかPCにはデビルバスターオンラインしか入れてなかったし、既にサービス終了しているから遊ぶ事も無かった筈。
試しに付けてみる。
『やぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! 孕んじゃう! 孕んじゃうのぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛!!』
ゴシャ
御免よマイPC。あまりにも衝撃的な触手エロゲだったため思わずディスプレイにギガンフィストしちまったよ。
誰かが言っていたよ。『触手ゲーム馬鹿にするなよ? 伊達に名作0のジャンルじゃねぇんだぞおい』と。
さて、目の前の黒い煙を上げているPCを放置して何がどうなったのか把握してみよう。
――――
佐倉桜は自分のベッドで目を覚ました。数ある並行世界の中で寮の周辺をうろついているあのエレガの被害が一番強かった奴だ。
確か昨日はいつも通り名作0で有名でも俺は絶対に手放せない触手エロゲをやってそのまま寝落ちしたはずだ。
だけど何故か自分のベッドに横になって寝ていると来たか。しかも一人ではない、何故か横に誰かいる感覚。
チラリ
「ギャーーーーーース!!」
思わず叫んだ。誰か一人ではなかった。二人いたからだ。
何で俺全裸? 何でゆかりとアイギス全裸なの? ってかアイギス元から全裸じゃないか安心し……ねえよ!!
「昨日はとっても激しくてオーバーヒートを起こしました」
ロボット相手になにやっているの俺!?
「もう……朝っぱらから叫ばないでよ」
ギャーーース!?
思わず自分のベッドを捲る。やっぱり全裸だった。
何? 何がどうなっているの? とりあえず把握してみよう。
――――
とりあえず自分の部屋を漁ってみる。そして絶望した。
「何でクローゼットの中で触手エロゲがタワーとなっているの!!」
それと隅っこの方に何事も無いようにスッゲェくらい特殊な方向性のエロ同人誌もタワーとなっていた。後エロ同人ゲーも。
「……模様替えしてないよな? そもそも俺には必要性無いし」
リアルエロゲー体感者の彼からすれば二次元なんぞ屁でもない。
リアルエロゲーと同じ境遇を一年間持っていた作者も同意権だ。
うん、年頃の女の子達と一つ屋根の下ってね。色々大変だったよ。マジで。イベント何も起きなかったけどな!!
七歳年下と一歳年下と二歳年上の三姉妹と同じ家ってね、大変だったよ……。
「そんな作者の心情なんぞどうでもいい。とにかく何がどうなっている?」
――――
とりあえず二人を即効で帰して状況を把握するため部屋を漁ってみる。そして絶望した。
「何でクローゼットの中がSMグッズとか首輪とかそんな物で溢れかえっているの!? しかも何よこの『亀の頭の意味を持つ少年専用首輪』って!?」
ぶっちゃけファルロス専用だったけどな。でも彼もう出て来なくなったから代わりに天田専用に代わった事を彼は知らない。
仕方ない、とりあえず日課となっている触手エロゲでも遊ぶか。
音を立てて起動されているPC。
あれ? なんで電源オフになっているんだ? 俺付けっぱなしで寝落ちだったずだ。
「電源を付けて待っている間も惜しいんだよこのクソPCが!!」
どこかの海外動画であったあの廃人少年プレイヤーを思い出す。
そして中にあったデータを見て愕然とした。
「ジブ○ールとか姫○軍とか妖獣○ラブとか突撃天使か○んとかスイ○トナイツとか魔法天使○サキとか淫○蟲とかは!?」
数々のPCにはそんな形跡も無く、ただデビルバスターオンラインとか言うサービスが終了しているMMORPGがインストされているだけだった。
「何がどうなっているんだ……?」
――――
大体想像がついた。あのエレガの仕業か。
皆が自分の事を桜(くん、さん)と呼ぶ。さっきベルベットルームにいたもう片方の俺も桜と名乗った。
そうか、こっちの俺じゃ触手エロゲ万歳な生活を送っているのか。
そりゃ作者もハーミット戦の時は雷使うの想像付かなくてゆかり連れて来て痛い目したけどさ。アイギス連れていたら多分泣いていた。
だがこっちの桜という奴じゃ何の躊躇もなくハーミットの電気ケーブルプレイをさせていたんだろうなぁ。
「痺れちゃうのぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛!!」
といっては体中の弱点と属性の弱点で攻められていたんだろうなぁ。今度戻ったら擬似的に試してみるか。
多分この元の体の持ち主の所持ペルソナはこっち側じゃ存在してないけどマーラ様だ、うん。
――――
大体想像がついた。あのエレガの仕業か。
皆が自分の事を優也(仮)(君、さん)、ご主人様(!?)と呼んでいる。さっきベルベットルームにいたもう片方の俺も優也と仮に名乗った。
そうか、こっちの俺じゃエロス満載の生活を送っているのか。
そりゃ作者も801だろうと何だろうととにかくエロ風味なネタを書きたくなるな。
だがこっちの優也(仮)という奴の部屋には高校生に必須の近藤さんが一個も無かったというか、ゴミ箱漁ってもそれらしい物が一個も無かった。
まさか毎回近藤さん不必要プレイ? アイギスは確かにそうだけどさ。
多分この元の体の持ち主の所持ペルソナはこっち側じゃ存在してないけどマーラ様だ、うん。
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偶然にも二人の考えが方向性は違えど一致したのは同一存在のなせる業か。
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「なぁ桜」
「ん?」
突然テレッテ・順平=イオリに話しかけられる。
「何か今日雰囲気変わったよな?」
「さぁ、気のせいじゃないか?」
「あれか? 予約したけど用事があったので代わりに天田に買わせに行った触手エロゲが外れだったのか?」
何て事をしているんだこっちの俺。それと店員いくらなんでも天田のチェックを通すなよ。
「いや、それとは違う」
「馬鹿言うな! お前から触手エロゲが無くなったら何が残るんだよ!? ツッコミとM属性だけじゃないか!」
最低だなこっちの俺。
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「なあ」
「なに?」
突然肉彦・真田=タルンダ四世に話しかけられる。
「気のせいか雰囲気変わったな、俺とこの前やったプロテインプレイの賜物か?」
何やってんだこっちの俺。それとプロテインプレイって何だよ? 男同士でプロテイン体に塗りたくったの?
「いや、ちょっと違う」
「何を! おっとすまない、電話だ。俺だ、ああ、はい、女王様。いつもの部屋へですね。かしこまりました」
「女王様(;´Д`)?」
「美鶴以外誰がいる?」
そうか、こっちの肉彦先輩はそっち側の人間なのか。
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風花は何も変わってなかった。
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山岸は何も変わってなかった。
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これは仕方ない。
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とりあえずどちらの世界の彼も元凶としか言えないエリザベスの元へ向かった。
ここは平行世界を一時的に繋げた場所であったので、今再び彼等は邂逅した。
「「ゴルァァァァァエリザベェェェェス!!」」
「な、きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
叫んだのは誰でもない。入浴中だった、エリザベスではなくイゴール。
「サタン!!」
サタンが召喚され。
「ルシファー!!」
桜のルシファーも出て来た事で。
「「テメェにハルマゲドン!!」」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、もうらめぇぇぇぇぇぇ!!」
何故そんなエロゲーのヒロインにありがちな台詞(特殊な場合で)で果てたのかは知らないけど、とりあえず鼻は闇に葬った。
「あら、お楽しみいただけましたか?」
「ああ、楽しすぎて涙が出てくるほどだ」
あくまでもちゃらけた感じに言う。だがその言葉の奥の闇は計り知れない。
「チッ、鼻がやられた以上私はメギドラオンでございますばかりやるのもありなんですけどね」
不穏当だよこの人の考え方。
「まぁいいでしょう、この優しいエリザベス様の助力によってあなた方を元の世界へ帰します」
元々故意に逆の世界に放り投げただけだろ。
「そーれあっちからこっちーーーー!!」
ラッキー○ン乙と思いながら二人は元の世界へ帰った。
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元の世界へ帰った。そして絶望した。
「あのエロ本持って何冊かくすねて来ればよかった!!」
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佐倉桜は元の世界へ帰った。そして絶望した。
「俺の触手ゲー90%以上占めているPCがボコボコに!!」
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そんないつもの毎日。
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「よくねぇ!!」