【トリックもするけどトリートもするぞ】
悪戯な子にはお仕置きをって、冗談半分で言ったら本気になってしまった。まぁ、順平の軽い挑発にムキになる辺り、まだまだ子どもだなぁと思う。
俺からすればそこが良いんだけどね。
事の発端は文化祭での出来事だった。
撮影禁止となっていた女子生徒のメイド服を、というかゆかりの弓道部の喫茶店でのメイド服を撮ったらカメラを没収され、挙句寮のメンバーによるメイド喫茶で、男の俺がメイド服を着てウェイトレスをするはめになったことだ。
「写真撮ったバツ」
と、ちょっとふくれながら言われ、本気で女装をせにゃならなかったこの一瞬を涙したが、その後、終わった後の展開で悪くは無いと思った。
ぶっちゃけ俺もゆかりにメイド服を撮られてました。
俺が写真を没収された挙句、こうやってメイド服を着せられ、挙句の果てにウェイトレスとして働かされた。
不公平だよ!!
と、言う事もあり、何事も公平なのが一番だよねと、今どんなお仕置きをするか悩んでいる。
「なので、俺の願いを聞いてください」
「ひぃ……」
思わず後ずさりをする目の前の哀れな子猫ちゃん。勿論滅多にこんな展開は無いので、いっそのこと公平になるかならないかの瀬戸際のお願いをする。
だからと言って、全年齢的要素で終わらせるほど健全な高校生じゃない。人として何かが間違っている気がするけど、彼女が嫌がるか嫌がらないかの瀬戸際で、なおかつ俺自身が昂ぶるような事を考えなくてはならない。
しかしながら一般高校生、そんな事を考えるなんて朝飯前にも程があるのさ。
後日……。
「ん……んふ……」
「そう…そうやって綺麗に舐めてよ……」
今、施錠された自分の部屋で彼女はメイド服を着ながら、俗に言うご奉仕を行っている。ちょっと挑発をしただけで、まさか本当にしてくれるとは思いもしなかった。
「もうちょっと舌を使わないと垂れちゃうよ?」
「わ、分かってるわよ……」
「ダーメ、その言い方は。『ご主人様』でしょ?」
黙ってそれを咥えながら命令を聞いていた彼女でも、その言葉に眉を顰める。無理もない、ただでさえ今行っている行為が辱めを受けているのに、更に羞恥心を昂ぶらせるような言葉を言わなくてはならないのかと思ってしまう。
「嫌ならいいよ。君が没収した俺が撮った写真を返してもらうだけだから」
「それは…その……」
「ならいいじゃん、ただ単に俺の目の前でメイド服を着てアイスを食べてもらうだけなんだから」
簡単な事だった。この前の文化祭のメイド服を俺の部屋で着てもらって、自分が用意した棒アイスを食べてもらうというものだった。
ちなみに、意図的に少し溶けかけており、食べようとするも、口元を伝って冷たい雫が垂れるように調整されている。
勿論食べる場所は俺の膝の上と決まっている。そこで棒アイス、当然練乳入りを食べているだけでよい。それだけで満足しそうだが、人間の欲求とは留まる事を知らない。
「ほら、それを食べる時は上目遣いでこちらを見るのが相場って決まっているでしょ」
「し、知らないから…」
知らないのなら、体に教え込むしかないか。そんなバカな事を考えていると、彼女の目が明らかに不快を訴えている。
だがこちらは止めてよいのだろうか。一応彼女は結果的に写メはそのまま自分の所有物とし、こちらは没収の挙句メイド服を着て接客という辱めを受けている。それと同等の事は中々存在しないって普通。
だからと言って直接的な辱めは俺の性に合わない。よって間接的な、言うなればその行動自体に特に恥ずかしさは無いものの、知る人が見れば思いっきり恥ずかしい行動を取ってもらう事にした。
そう、何も考えなければ、特に恥ずかしい行動ではないのだ。何も考えなければの話だが……。
「でさ、『ご主人様』って言ってくれないの?」
「い、言うわけないじゃない!」
「えー…せっかくだしさ、この場の流れって物があるんじゃない? あと需要」
「何の需要!?」
「あ、それとさ、アイスが溶けちゃうよ」
彼女は小さい吐息を漏らしながら、多少形を崩したアイスを名残惜しそうに見ている。その溶けた練乳は口元を汚し、重力に導かれるようにアゴを伝う。
ヤバい、正直、何かがクる。こう、いつ自分の中の何かがハジけてもおかしくないと思う。
もう召喚器は暴発寸前であり、いつペルソナが暴走しても不自然じゃない。
ましてやゆかりの顔は練乳という白い液体で多少汚されている。
1:「顔が汚れているよ」と、自分の舌で舐め取る
2:「汚れちゃったなら洗わなくちゃね」と、一回のシャワールームへとお姫様抱っこ
3:「もう我慢できないー」と、このまま有無を言わさずベッドへと押し倒す
4:「じゃあ俺も」と、食べている途中のアイスを頬張る
5:アイスごとイタダキマス
なんかどれにしてもあまり選択肢の結果が変わらないのは仕様です。
「……あのさ、ゆかり」
「何?」
目の前で唇に付いている白濁した液体を、弓道をやっているからか、決して白魚とは言えないものの、それなりに手入れされた指で掬い取って舐めている。
更に暴発しそうになった。
「……あのね」
「何?」
今度は俺が尋ねられた。膝の上のパートナー、違った。膝の上で丸くなりながら、ちょっとだけ頬を赤く染めている。
「あの、ね……うん、あれがさ……当たっているんだけど」
「あれ?」
曖昧な表現という事もあって、本気でゆかりの言いたい事が理解できない。ただ、ゆかりにとって凄い恥ずかしい一言だというのは何となく分かった。
「そのさ、君のあれがさ……お尻に当たっちゃっているんだけど……」
ようやく理解した。そうかそうか、暴発寸前だった召喚器は更にたぎりを見せる。
ええ、はっきり言って我慢出来ませんでした。過去形なのは推して知るべし。